映画『プリデスティネーション』のセリフで学ぶ英語表現/「すごい偶然ね」

バー

『プリデスティネーション』(2014年オーストラリア映画)
原題:Predestination
監督:マイケル・スピエリッグ(Michael Spierig)、ピーター・スピエリッグ(Peter Spierig)
主な出演俳優:イーサン・ホーク(Ethan Hawke)、サラ・スヌーク(Sarah Snook)、ノア・テイラー(Noah Taylor)

あらすじ

1970年11月、ニューヨーク。場末のバーに現われた男ジョンは、バーテンダーに自らの数奇な半生を語る。元々はジェーンという名の女性であったこと。孤児院育ちであること。運命的に出会った男性に裏切られたこと。彼との間に出来た娘を何者かに奪われたこと。そして男性となった経緯…。青年の告白に同情したバーテンダーは、あることを条件に、彼に復讐のチャンスを与えると提案、2人で1963年へとタイムスリップする。バーテンダーは未来から来た時空警察のエージェントだったのだ。彼は1970年のニューヨークを震撼させている連続爆弾魔フィズル・ボマーの犯行阻止を最後の任務と決め、引退する自分の代わりにジョンを後継者に仕立て上げようとしていた。

What are the odds? | すごい偶然ね

ダイアログ|DIALOGUE

雨の降る夜、大学の講義を受け終えたジェーンが、その帰り道で謎の男とぶつかる。


JANE | ジェーン

Oh! I’m so sorry.
Are you lost?

あ! ごめんなさい。
道に迷ったの?

MAN | 男

No, I’m looking for someone.
Thanks, I’ll just wait.

いや 人を捜してるところなんだ。
ありがとう。待つことにするよ。

JANE | ジェーン

Well, you know what they say about good things happening to those who wait.

あら、待ってるだけの人には いいことなんて起こらないって言うじゃない。

MAN | 男

But only the things left behind by those who hustle.

“残り物しか手に入らない”から?

JANE | ジェーン

I was thinking the exact same thing.
What are the odds?

私も全く同じこと考えてたわ。
すごい偶然ね。


単語と表現

hustle

張り切る、頑張る。

日本語でも「ハッスルする」と言ったりしますね。

Things may come to those who wait, but only the things left by those who hustle.

「待っているだけの者たちにも何か(良いこと)は起こるかもしれないが、それは努力した者たちの残り物にしかすぎない。」

これは、かの有名なエイブラハム・リンカーン大統領が残した名言とされています(ただし、その明確な証拠は存在しないと言う人もいるようです)。

このシーンに登場する2人は必ずしも、巷で最も広まっていると思われる文言を忠実に引用しているわけではありません。
例えば、ジェーンは “Things may come” を “Good things happening” と言ったり、男は “left” を “left behind” と言ったりと微妙な違いがあります。
名言を少し違って記憶していた、なんてことは普通によくありますから、それが逆にこのシーンのリアリティを生んでいるかもしれません。

それにしても、この名言の認知度ってアメリカ国内ではどの程度のものなんでしょうね。
ジェーンはこのやり取りをきっかけに、この男との“運命的”なものを感じたとされています。
ある名言について、上の句を投げたら下の句が返ってきた。
そのことだけで相手に運命を感じてしまうほどであるということは、実は相当マイナーな知識なのかも…と思ってしまいました。

What are the odds?

odds(オッズ)とは確率のこと。
日本語としても、特に競馬をやる人にとっては馴染み深い単語かもしれませんね。
馬券の的中倍率のことを「オッズ」と呼んだりしますから。

直訳すれば「(こんなことが起きるのって)どれくらいの確率なの?」ということです。
滅多に起きないことが起きた場面で使うことによって「すごい偶然だね!」という驚きを表すニュアンスに転じるわけですね。